DAY7ーPART1
硝煙弾雨


燃費ブッチギリ走行で発生したロスタイムでタイヤ、ブレーキパッド、エンジンオイルを交換。十勝24時間レースでは、エンジンオイル交換はなしで、継ぎ足しだけでゴールまで行ってしまいます。スタートでは超ハイプレで
地獄を見ましたが、交換したあとのタイヤを見て納得。

10時間走ったタイヤでも新品に見えるくらい減ってませんでした。たぶん24時間無交換で行けるでしょう。これだけライフが長いんだったらウエット性能には妥協しててもしょうがないかもしれません。もうちょっと車重がないと荷重が足りないかな。

燃費についてはタイムが早ければガソリンを使うのは当たり前。使ったガソリン以上にタイムを稼いでくればOKなのですよ。はっはっは。

交代したK氏は15分台の安定したラップをマークしながら淡々と走行中。草木も眠る丑三つ時でもオレは緊急ピットインに備えてピットで待機します。前みたいなピットインがあると、いつ何があるかわかんないからね。



ただしオレの
生態エネルギーを供給してくれる売店はお休み。ソーセージを頼むとパンで挟んだゴッツイのが出てきて、それがまた旨かったんだ。英語がわかるオネーチャンがいる時間帯に行かないと、後ろに並んでる人に迷惑をかけるという問題もありましたが。

ソーセージは英語。ドイツ語では確か「WURST」。「ソーセージくれ」って言ってたら、まわりの親切なドイツ人の人が「WURST」って言ってくれました。それも3箇所くらいから同時だったりして(笑)。みんな親切です。

極寒の夜を乗り切るにはやはり
味噌。こういうちょっとした日本食が精神的に大きなリフレッシュになります。雑然としたテーブルがいいなあ(笑)。


そして午前3時26分、K氏が自分の最後のスティントを終えてピットイン。

いろいろあったし最後まで15分台だったけど、無事に帰ってきたからOKにしましょう! ニュルの夜は無事に走り切るだけでハナマルをあげたくなります。

ピースしてるのは、見物兼お手伝いのはずがテッツア組メカニックに
なっちゃった丸田さんです。余裕あるじゃん(笑)。

ここでヘルパーのみなさんに、K氏の疲労を考慮してピット裏のコンテナじゃなくて、駐車場のクルマの中で休んでもらうように指示。肉体的にラクチンなヴィッツでも、夜のニュルという時点でドライビングのストレスは相当なもんだし、夜は遅ければ遅いほど怖い思いをしているということもいえます。

予定では次のスティントはK氏で行って、そこで夜明けになるはずだったので、ピットで待機してるところなんですが、後の布石もあって、ここはゆっくり休んでもらうことにしました。どんな布石かはちょっと書けないな(笑)。



ここでは特にというか全く問題なし。ドライバー交代、ガス補給のルーティーンピットです。

この時点でクラス6位。5位のフォルクスワーゲンPOLOは2周先、7位のミニクーパーは4周後ろで、トラブルがなければ順位は動きません。2周ったって30分近くだからね。追いかけてもリスクがあるだけです。

つまり完走すれば
6位以内確定!

というわけで全開バリバリ走行は解除。ここからは全力でヴィッツ君をゴールまで運ぶ作戦に切り替えます。妙な表現だけど、全力じゃないとゴールまでいけないんですよ〜。









コースに出たらこの暗さ。どーすんだコレってくらい暗いです。









全開じゃないはずのこのスティントでも、なぜか
12分58秒をマーク。いや、ホントに無理はしてないし回転も回してないんだけど、やっぱり夜は原因不明の絶好調です(笑)。

ニュルに限らず24時間レースで最もヤバイのが、夜明け前のこの時間帯。ドライバーの慣れと疲労からミスが出ることもあるし、12時間以上走ってきたダメージの蓄積で壊れることもあります。壊れる気配を察知して止まる前にピットに入らないといけないから、責任重大ですぜ。

走ってる最中は寝てないし調子はいいし、何よりニュルが楽しくてもう最高! ってカンジだったけど(笑)。

調子がよくて寝てなければ、無線の会話も無意味にハイテンションになるもんです。

T橋「クラゴンさん調子はどうですか〜?」
クラゴン「水温は純正メーターの真ん中でバッチリ(まだ根に持ってる)、油圧は不明でバッチリ(これも根に持ってる)、クルマの調子は問題なし。異音もなし。ドライバーも
○○○以外は元気ビンビンです」
T橋「ドライバーの
○○○は股ベルトを締めるときに邪魔だから、そのまんまでいいですよ」
クラゴン「股ベルトついてないから
ビンビンでも大丈夫です」
T橋「じゃあ好きにしてください」

新プレイ、言葉攻め!


言葉攻めを受けながらも走りは超マヂ。5cmや10cmの距離で抜いていくのは当たり前です。接触したって「そんなのレースだからしょうがないじゃん」ってことなんでしょうね。相手に遠慮なくこういうタイトなことをできるレースって、とってもオレ向きでした(笑)。

となりのマシンのライトで明るいのが切ない(笑)。

S2000オーバーテイクなんてシーンもありましたっけ。ヴィッツとS2000だから相当キテてるますねえ。十勝ではS2000でランサー抜いたり、NSXでポルシェ抜いたりしてるから、まあこんなもんですよ。




コース上でD−Rights号と遭遇!


スイフトでインテRを煽りながら、バックフォグで「先行くぜ〜」の合図。オレもヘッドライト点滅で「行ってらっしゃい〜」の合図をしたら、コースが見えなくなって
ビックリしました。

この余裕、そしてとってもガラの悪いオラオラ系の煽り方(笑)、絶対にO井さんだと思ってましたが、ホントにO井さんでした。スイフトでインテRを抜いてくんだからタダモノじゃありません。この人も心眼の使い手です。

そんなこんなでニュルを堪能していたところ、山下選手のドライブするアルテッツァがクラッシュ!

うおーギリギリ!

5速か4速で進入する高速コーナーでBMWに当てられてコースアウトし、そのままクラッシュ! タイヤバリヤーに当たってコース上まで跳ね返って来るほどの衝撃でした。

後続車が突っ込んでいたらケガでは済まなかったでしょう。

オレも回避に一生懸命だったけど、すぐそばを通りがかったオレでさえ、フロント周りがあまりに変形していて
BMWかと思っていました。

チーフメカの武ちゃんが2時間かけて修理に向かいましたが、マシンは全損。

アルテッツァはここで終了となりました。

これがニュル。山下さんが無事だっただけで奇跡です。


午前4時53分。

待望の夜明けです。

北海道より緯度が高いくらいだから、夜明けも早いんでしょうか。


ニュル初参戦で夜明けまで到達! 
うおっしゃー!

ゴールしたときよりも、この瞬間が一番嬉しかったかもしれません。

しかもトップを快走していたスズキスイフトGTI(カルタスね)がエンジントラブルで後退し、クラス5位に浮上!

すでに50チーム近くがリタイヤ、または修理のためピットイン。晴れ、雨、雹(ヒョウ)と変化する天候も、疲労困憊のドライバーのミスを誘います。

ニュルの森、アデナウフォレストの藻屑となるか、最後まで生き残って何かを得るか、夜明けからは自分との闘いです。

でも台数が減ってコース上は
とっても走りやすくなってきました(笑)。




DAY7−PART2