DAY6−DAY7 |
一騎当千 |
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う〜ん、さむっ。んあ〜何でこんな寒みーんだよ〜。 「クラゴンさん起きてください!」 んが。 「緊急ピットインです!」 ガバッ。「んあいよ!」 |
いいのは返事だけでほとんど目は覚めていません。時計を見ると予定よりもちょっと早い夜の11時。もちろん全く準備はしていないので、あわててレーシングスーツを装着! 速くて1周12分だから、突然起こされてもゆっくり着替えられるぜい。そのわりにみんな急かすな。と思いつつ、難民キャンプにしか見えないコンテナからピットへ。 ヴィッツの愛らしいフォルムがピットにドッギャ〜ン! と待機してるじゃありませんか! なんでもうピットに帰ってきてるんだよ〜! 騒いでもタイムロスは取り返せないので、とりあえずマシンに乗り込みます。メカニックのT橋さんが今週一番不機嫌な顔というか雰囲気というか殺気ビンビンでベルトを締めながら状況説明。 オレの前に乗ったK氏のスティントで完全に無線が途絶え、大騒ぎだったそうです。ピットアウト直後の呼びかけから全く応答なし。とりあえず走れるにしても、今どこかで止まったら止まっている場所の連絡すらできません。と、ピットで頭を抱えていたところでK氏が緊急ピットイン! 駆け寄ったメカニックに発せられた言葉は「無線の使い方聞いてなかった!」だったそうです。確かに言ってなかった。目の前にあるボタンの説明の必要があるなんて思いもしませんでしたよ。 しかもラップタイムが1周16分台の後半ということもあり、ブチ切れたT橋さんがここでドライバー交代を決定。突如オレの出番となったわけです。 |
これがニュルの夜。 心眼なしに挑めば目の前にある無線のボタンすら見えません。ただ、K氏にはこれで夜のヤバさ加減を知ってもらって、次のスティントまでに落ち着いてコースを考える時間を作れたということもあります。勝つための体制ではない以上、こういうイレギュラーな事態を何とかするのがオレの仕事。 だからヘッドライトだけじゃ足りないでしょ〜? 補助ライトつけようって言ったじゃ〜ん。 どんなことが起ころうが、艦載機乗りと同じくエンジンがかかったら全開なのがレーシングドライバー! タイムロスは走りで取り戻す! …いいところですが、まずオレが爆睡している間の出来事を振り返っておきましょう。 |
ヴィッツ組はスタートから、オレ⇒藤岡さん⇒岸本さん⇒藤岡さん⇒K氏とつないだところで緊急ピットイン。順位はミニクーパーのみなさんが予定通りのトラブル連発で下位に沈み、6時間経過時点から2時間ほど6位〜7位を行ったり来たりしてます。 総合順位はスタートから40位くらいアップの160位までジャンプアップ! ラップタイムは遅いヴィッツだけに、どれだけオトコ率の高いレースかがわかるってもんですね。 大きなトラブルは特になし、細かいトラブルも全くなし。 一方アルテッツァ組は1回目のピットインでスターターにトラブルが発生。モーターのコイルだかなんだかが飛んでいたそうです。しかもやっぱりスペアはなく、メカさんの気合の応急処置でコースへ復帰。 今度は水温が50℃台から上がらず、ピットインと同時にガムテープでラジエータを塞いでいく面積が増えていったそうです。 ヴィッツの水温計は最初から140℃だから大丈夫。純正メーターは真ん中をさしてるし(笑)。 |
このころだとまだみんなピースする余裕もありますね〜(笑)。 同じピットのフレパーモータースポーツさんち(緑号ね)は緊急ピット&修理の波状攻撃! 最後は裏のテントの前でも修理がはじまってました。 |
それではレースに戻りましょう。ピットアウトしたらまずはマシンチェック。まっすぐ走るかどうか、足回りやブレーキにおかしなところはないか、確認しないことにゃ危なくて走れません。 大丈夫だろうという勝手な思い込みでリタイヤするわけにはいかんでしょ。 いろいろ確認したところ、だいたいOK。まだ元気です。 T橋さん「クラゴンさん調子どうですか〜」 クラゴン「特に問題ねッス。」 T橋さん「じゃあそろそろ勝負かけますか! 燃費も取りたいんで全開オッケーです。」 クラゴン「了解!」 待ちに待った全開指令! しかも夜! もう言うことありません(笑)。 1周目は確認走行とピットのロスで15分46秒415。これでもK氏よりも速いタイムだったりして。2周目には13分03秒911! これまでのチームのベストラップを1分30秒くらい更新! そして3周目は予選よりも10秒速い12分48秒720! やっぱり夜は調子がいいぜ! 全開とはいっても回転リミットはいっしょです。5500回転くらいだったかな。ただし燃費を考えて登り区間で抜いていたアクセルを踏みッパで行ってます。あとはコーナリングスピードアップ。リスクはあるけど、勝負をかけるっていったらどんな手段でも使ってタイムを出さないとね。 それにこっちがペースを上げることで、まわりがペースを乱すということも多いので、周回数に差があるからボケッ〜と走るなんてことはありません。遅いマシンでレースするんだったら、どれだけみんなを混乱に陥れるかでしょ。 あんまり写真がなくて申し訳ないんですが、これがまた絶好調で困っちゃいましたよ。クラストップのピンク色のカルタスとのバトルを楽しんでしまいました。 直線は昼間と同じようにぶい〜んと抜いていくヤツを、コーナーでズビシとオーバーテイク! 向こうが夜で遅くなったぶん、こっちが全開モードで行けば勝負になります。まあ、今しか勝負できないんだけど。 昼間の1分差を跳ね返すパフォーマンス! これが心眼! しかも13分3秒台が2回、13分6秒台が1回、見えない夜に速いマシンに譲りながらこのタイム差です。 よく「レースはクルマが8割」っていう人がいますが、オレは、それは言ってる本人が2割ぶんしか頑張らなかったということだと思います。確かにクルマが速ければ勝つ確立は高くなるし、そのために速いマシンや速いメカニックを探します。 だけど、いろんな事情で速いマシンを用意できなかったとき「どうせクルマが8割だからダメだった」なんていうのはただの言い訳。オレがこれまでお世話になったオトコのみなさんは、そんな言い訳をすることは1回もありませんでした。 マシンが遅ければ燃費で、ピット作業時間で、耐久性で、最後はドライバーの気合で勝負! どうしようもない不利な状況をわかっていながら、どんな手段を使ってでも何とかするムチャな能力。まさに一騎当千の実力がなけりゃプロの仕事はできませんぜ。 そういう意味では武ちゃんもT橋さんもまぎれもなく一騎当千のメカニックです。 ところが敵もさるもので、オレが速いことをわかって最後は直線で抜かなくなりました。結局、後ろで2周くらいドライビングを勉強したあと、やっぱり直線でヘロッとオーバーテイク。そのあとは全く追いつきませんでしたよ。 ヤツらはどうやったら速くなれるかよく考えてますよね。S耐にはここまで考えて乗れるドライバーはそういません。感心しました。 しかも同じようなことをするヤツが5人くらいいて、さらに感心しました。 オマエらクラゴン部屋のエントリー代払え(笑)! |
そのころテッツア組は接触で緊急ピットイン。 ライトの交換で事なきを得ました。だけど、やっぱり24時間で修復の必要な接触はNGです。しょうがないけどね。 ヴィッツだったらスペアのヘッドライトもないっつーの。だってスペアのバルブもないんだから(笑)。 |
実はこのスティントで、たぶんみなさんが一番心配してることをやっておきましたよ。 コース間違えちゃった。 「カーレンハード」っていう場所です。下りながら4速で左右のS字なんだけど、もうちょっと先の4速全開の左コーナーと間違えて全開のまま進入! 夜は見えないからねえ。気付いたときにはすでに遅く、減速、回避のどちらも不可能。最後の手段は縁石をカットして離陸! ぬおりゃ〜! ぼーん 見事着地! 真後ろにいたはずのポルシェのライトが小さくなってました(笑)。ビビッたでしょうねえ。だって全開だもんなあ。 危険を回避しながらポルシェをブッチしたということは完全勝利といっていいんじゃないでしょうか。 |
クラゴン部屋独逸巡業を開催しながらがゴキゲンで走っていると、インパネの一部がカラータイマーのやうに点滅しているじゃありませんか。 はにゃ? 縦線の目盛りでさっきより減ってて、上に「F」下に「E」。あ、ガソリン。 クラゴン「T橋さーん。ガソリン点滅してるんだけど、どこまでいけますかね?」 T橋さん「えー!? もうガス欠?」 クラゴン「うん、ガス欠」 T橋さん「じゃあピット入ってください」 クラゴン「すぐに? それともあと1周?」 T橋さん「今入って!」 全開バリバリ走行の結果、予定よりも1周早くガス欠になっちゃった。ホントは2時間は行くはずだったんだけど、まあしょうがないでしょう。 ただし、2時間たたないとK氏が乗れないため、この空き時間にブレーキパッド、オイル、タイヤを交換。タイムがブッチなら燃費もブッチの5.95km/Lでした(笑)。 K氏があと2時間無事に走ってくれれば、あとはオレのスティントで夜明けまで行けるはず! 何分遅かろうが走ってもらうしかありません。 |
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DAY7−PART1⇔ |