DAY5
一虚一実


ふい〜、レポートがやっと予選までたどり着きました。5日目っていったら、国内レースだったらとっくに終わってる量です。

この予選がまた大変で、
混乱のピークはここだったといっても過言ではありません。

事前に入手した情報では、各ドライバー1周走れば基準をクリアできるとのこと。決勝までできるだけ周回数を減らしたいので、10:00〜12:00の予選1回目に1周だけアタックして全員が基準をクリア。19:00〜23:00の予選2回目はオレがライトの光軸だけチェックして終了にするつもりでした。

他のみんなの夜の練習はどうするかって? 
そんなもんはなし! スペアパーツがない以上、とりあえずグリッドまで駒を進めることが大切。練習したことによるタイムアップよりも、予選でクラッシュして終わり、というデメリットを避けるしかありません。

いくら夜の練習をしたところで、決勝が始まってから夜まで生き残るかわかんないし、生き残ったらオレが乗りまくればいいだけの話です。とにかく危険な夜は、決勝まで含めてオレ以外のドライバーは、可能な限り乗らない方向にしました。

ついでに書いちゃうと、言葉を濁すM氏を追及することで徐々にヴィッツ君の状態が判明してきました。車体は
中古で買った2万キロ走行の普通車。FIAのレギュレーションに必要なロールバーや消火器を取り付けて、ハブなどの壊れやすいパーツだけを新品に交換。ジムカーナの高速仕様のサスキットをつけたそうです。以上。

恐ろしいことにエンジンとミッションは
2万キロ走ってそのまんま&スペアなし。世界最大の草レースにふさわしい状態です。決勝の前に壊れたらスポンサーになんて言うのかね。

そもそもサスがジムカーナの高速仕様という時点で倒れそうですが。
オレたちが走るのはニュルなんですけど。

さらに後付けの水温計は
常時140℃(笑)で純正メーターが頼り。動いたときにはオーバーヒートしてるんですけど(笑)。「水温が140℃だ!」と驚いてる人もいましたが、水は100℃で沸騰しますんで。

燃料タンクだって、レース用の安全タンクじゃなくて
純正。レギュレーションには通るけど、純正タンクのレーシングカーなんてはじめて見た。

レギュレーションの確認ができていなければ、マシンのメンテもできていない、最低限必要なスペアパーツもない。
一事が万事といいますが、まさにその状態です。

こんな状況なので、夜間攻撃のスキルを上げるヒマがあったら、リスクを避ける方法を考える方が効率的でしょ。しかもニュルなんだから、中途ハンパな作戦は通用しません。ドライバーの岸本さん、藤岡さんには申し訳ないけど、
これも生き残るための作戦です。



アタックはまずオレから。オレがタイヤを暖めて、あとのドライバーのリスクを減らします。

グランプリコースを1周して最終コーナーから右折してショートカット。左折するとオールドコースで、右折するとF1の最終コーナー。アウトラップにまるまる1周するとそれだけで15分くらいかかっちゃうので、
時間短縮モードで。

タイムアタックとはいっても、230台が一斉に走るんだからクリアラップなんかあったもんじゃねえ! 全長約25キロを230台で割ると、
1キロあたり9.2台。5キロのコースで45台走っているのと同じくらいの混雑なんだけど…。

そこは
ヴィッツ。抜かれるのに忙しくてクリアラップどころじゃないよ。

しかもあっちこっちでいきなり
オトコになってるヤツがいるしコーション区間があるしで、アタックどころでもありません。ガイジンはウオームアップっていう言葉を知らんのでしょうか。

コーション区間で軽く20秒ほどロスしながら
13分43秒954。こんなもんだべ。

いちおう説明しておくけど、みんなが知ってる8分とかのオールドコースだけじゃないからね。グランプリコースも走ってるからオールドコース+2分くらいだと思って下さい。

A1クラストップはスズキさんちのスイフトGTIで12分28秒043。ここではじめてライバルのタイムがわかるという恐ろしい展開です(笑)。

その差は約1分15秒。75秒として考えると75÷25=3でキロ当たり300円、じゃなくて3秒差。わかりやすくサーキットに置き換えませう。約2キロの
筑波2000で6秒差。

これは
お手上げっちゅーヤツですな。

ちゃんとしたレーシングカーと、とりあえず車検だけ通るように作ったレーシングカーの差です。ま、勝つことが目的じゃないしレースは24時間。この程度の差で慌てるようじゃクラゴンにはなれませんぜ。

岸本さん、藤岡さん、K氏まで全員乗り換えて無事に1ラップをクリア。ふい〜今のところ順調。

だがしかし!

来年はコレがいいな(笑)

予選1回目終了後、
予選落ちがあるという情報が! おーいマヂかよ〜!

何やら親切なオフィシャルが
「お前ら予選落ちギリギリだからがんばれ!」とわざわざ言いに来たそうです。でもドラミで予選落ちがないってハッキリ言ってたし…。オレが直接聞いたんじゃないのが悔やまれます。

この時点でA1クラス9位(10台中)、総合214位。確かにレギュレーションブックの通りだったら危ないところですが…。

さらに、決勝に出るための義務周回数が、実は2周だったという情報まで判明。こっちは誰かが他の日本チームに確認に行ったので間違いないでしょう。

超速バイパー ポルシェとハリアーの組み合わせがいいね

予選落ちがあるのかどうかを確認しようにも、その親切なオフシャルとやらがどこにいるか、誰なのかもわかりません。

こういう場合は案分比っちゅーのがありまして、各クラスから何台予選落ちするか、台数によって振り分けられるのが普通です。だってリザルトの上から順番にしたら、下のクラスは全滅しちゃうでしょ。だから、10台のクラスからは1台、30台のクラスからは3台という具合に、クラス順位をもとに予選通過を決めます。

この予選落ちアリ情報をよくよく確認してみると、案分比を無視して総合で危ないとかいってるそうで、ますますアヤシイ。

とはいえ、どれほどひどいマシンだって、遠くドイツまで来て予選落ちに甘んじるわけにはいきません。

武ちゃんと高橋さんの目がキラ〜ンと、いや、
ギラリと光る!

武「
全開で行くか」 高「全開ですね」 ク「全開が一番確実でしょ」

案分比を無視して予選通過を決めることは絶対ない。そうだとしたら主催者に厳重に抗議します。ただし予選落ちはあるかもしれない。

ということは、ズバッとタイムを出して案分比さえクリアしちまえば、どんな状況でも文句をつけられない! 回転数、ギアの縛り一切ナシ。マシンの全てを使い切っての
全開指令が出ました。

あ、こんなところにSタイヤが。



そして予選2回目。

夜7時〜11時の4時間でタイムアタック&全員がもう1周しなきゃいけません。時間があるからそんなに難しくはないけど、もう1周は簡単だけど暗くなる前にしたいし、でもライトのチェックは絶対したいな。

こっちの夜は明るくて、夕方かな〜と思うと夜9時だったりします。実際に夜になるのは10時くらいからでしょうか。だからちょっとゆっくりしてると寝るヒマがなくなっていきます。

1回目の状況から予選開始直後、
コーション区間が完成する前(笑)にオレがアタックに入りました。

行きましたよ。ここだけは。

必要なときはスーパーシフトまで使って、超全開! 車載カメラを積まないくらいマヂアタックでした。しかも2周も3周もする時間はないし、負担を減らしたいから1周のみ!

もうよく覚えてないんだけど、途中までは恐れていたコーションもなく順調! カルッセルから出るときの
飛距離もバッチリだ!

カルッセルの先、登りながら左に曲がるコーナー(14.5km地点、名前忘れた)で宣戦布告したミニクーパーを発見!

殺す!

ここです

スーパーシフトで速度をかせぎ、インに無理矢理ネジ込んでオーヴァーテイク! おっしゃー!

いや、不適切な表現なのは承知してますが、殺意を覚えるなんてなかなかないことなので(笑)。ヤツがオレのアタックを邪魔していたら無事にピットに戻ることはなかったでしょう。比喩ではありません。

そのままの勢いで
ミニクーパーをブッチして、コントロールラインまで戻ったときの差はだいたい20秒。半周以下で20秒差です。よし! これで落ちるときはヤツからだ!

タイムは12分58秒017。

えーと、さっきが13分43秒954だから、
45秒くらいアップ! どこかのミニを1.4秒の僅差(笑)でおさえてクラス8位に浮上!

1周だけのアタックをキメて、あとはみんなが義務周回の1周をクリアすればOK! 予定通り!



なんとか全員無事に1周走って、これで予選をクリア。長い戦いぢゃったのう。

最後に光軸をチェック。IPFさんちのヘッドライトはとても明るかったんですが、補助ライトはひとつもなし。もう補助ライトがないくらいじゃビックリしませんが(笑)。

オレはいいですよ。
夜プレイ経験も豊富だし(豊富を通り越して夜担当)、心眼だって使えるし。だけど、全員トータルでのレベルを考えれば明るすぎて困ることはありません。

夜間プレイを甘く見ると怖いよ〜。

チームとしては、夜はオレとK氏の2人体制で走る作戦です。なぜかというと、岸本さんと藤岡さんの経験を考えて、中谷選手がNGを出したから。ケガで済まないことが多いから、走らせないのがベストなのは間違いありません。さすがニュルの怖さを知ってる人です。

夜間プレイはオレが光軸チェックだけやって終わり。もちろんK氏にも乗ってもらいたいのはヤマヤマでしたが、マシンを決勝まで持たせるのが最優先。もう少し良い経験を積まれてからのほうがいいでしょう。

でも中谷さん、岸本さんと藤岡さんはダメでオレとK氏はOKなのはなんでですか?

「K氏は今回の計画の初期から参加してるし、何かあっても自己責任ということがわかってる。でも塾長として、岸本君と藤岡君には絶対に無事に帰ってもらわないと。
クラゴン? 大丈夫だろ?

評価されてると思っていいんでしょうか(笑)。



ニュルの夜だからって特にどうということはありません。ブラインドコーナーばっかりでどうせ見えないし、
心眼を使って走るのは十勝と同じこと。

視覚情報に頼って操作をするようじゃ、行き当たりバッタリのドライビングといふことです。「次のコーナーがこうなってるからここはイン寄りで」っていう組み立ては、見えなくても関係なくできないとダメですから。


あとで車載をチェックしてみて笑っちゃったのが、ピットインしたときにM氏が話しかけてきて「問題なかったらとりあえずあと2〜3周走ってみて」といわれたとき、
「それなんか意味あるんスか?」と、とってもガラ悪く答えていた映像です。

ニュルでとりあえずの周回はナンセンス。アルテッツァはハグカップと予選で1回ずつガス欠ストップしてるくらいなんだから。普段はガラが悪くなることはないんだけど、よっぽど腹に据えかねてたんでしょう(笑)。

もちろんそのまま
撤収してやりましたよ。



昼を食ったサーキットレストランの写真です。料理の名前は忘れちゃった。

とりあえず肉です。


アントニオ猪木氏の「元気があればなんでもできる!」という名言がありますが、
肉があれば元気になれる! イチ、ニ、サン、ダァー!

ドイツでは山盛りポテトが米の代わりみたいなもんです。





レストラン内にこんなオシャレなディスプレイがあったりして。

上の写真もだいたいレストラン内のディスプレイというかオブジェです。中には今サーキットから拾ってきたようなのもあるけど(笑)。

サーキットならでは、なおかつ大人の雰囲気っていうのかな。日本のサーキットと比べて驚くことばっかりですよ。

驚くといえば肉と山のようなポテトもだけど。




流れから後回しにした無線取り付け。ヴィッツ君に無線がついたのは予選1回目と2回目の間だったりして。写真のあんちゃんが無線屋さんです。

このあんちゃんの英語が上手かったんだ。しかも「予選が19時だからそれまでに頼む!」っていうと必ず間に合わせてくれるし。日本じゃ苦労もしないはずのことなんだけど、助かりました。

本当はM氏が担当でしたが、なぜかヘッドセットひとつと、ドライバー人数分の無線を借りてきました。無線はアルテッツァとヴィッツで2つ+メカニックとピットであと5個もあればいいのに。英語がわかんないならそう言ってくれれば最初っからオレがやりますよ。できない人間が無理をするのが一番始末が悪いです。

しょうがないのでオレが交渉してヘッドセットを追加。車載無線のセットアップまでやりました。

無線でドイツ人と「ドゥーユーヒァミー?(聞こえる?)」「アイキャントひあー(聞こえねえ)」「レイズヴォリュ〜ムプリーズ」とかやってると、自分がいったい何をやっているんだかわからなくなってきて、かなり笑えます。


あとは決勝!

遠いホテルとメンテ不良のマシンのおかげで、メカニックのみなさんはサーキットに泊まりになりました。



DAY6ーPART1⇔