DAY4 part2
「タイヤ、ダメになったら交換するからね!」
「今のペースだったら行けますよ〜」
「ザザザッ、ザッ、………」




トップを快走もつかの間、ピットに緊張が走る。ピス兄のペースが上がらず、20周経過時点でクラス3位まで後退。

どうやらどっかのランサーに押し出されてタイヤを痛めちゃったらしい。今回はランサーに絡まれるなあ。レースだからしょうがないけどね。4位に後退した35周あたりで監督から召集が。

「ピストンさん、ペース上がんないんだわ! このまんまだと3位の可能性もなくなっちゃうから、長くて大変だけど、クラゴン行って! タイヤがもたなかったら交換してやるから!」

「へい。」


         


レースが始まっちゃうともう冷静、というよりも何があっても対応できるようにしてるから、
ピットインが予定より20周早くなるくらいじゃ動じません。

ピットインは49周目。クラス4どころか、1ストップ組の中では全クラスで一番早いルーティーン作業だったんじゃないかな。

予定よりかなり早いピットストップだったため、写真がありません。

久しぶりの耐久でちょっとお疲れのピス兄から交代! 練習した通りにベルトをしめてからシート前後を合わせる(←ココ重要)。シートが後ろのうちにベルトをしちゃったほうがゆるいじゃん。それからベルトピッタリまで前に出せば、シートの前後位置がピッタリという寸法でございますよ。

ドリンクのチューブと無線コネクターはピス兄にやってもらって、準備おっけー!

1速に入れて、キルスイッチをオン。スターターに指を乗せて、いつでもエンジンをかけられるようにしながらタイヤ交換が終わるのを待ちます。エアジャッキが降りる前にエンジンをかけたらペナルティーだから、ギリギリのタイミングが難しいのよ。

タイヤ交換が終わって、監督がエアジャッキを取ると
ぷっしゅ〜という音とともに着地。これまた監督のエンジンまわせ合図でスターターをポチットな!!

   4本足のエアジャッキ。FFはフロント2本、リア1本です。  オレンジのレバーをくいっとひねるとジャッキが降りるぜ!


エンジンがかかった瞬間にアクセルオン&クラッチリリース! きゅきゅきゅ〜っとホイールスピンしながらカウンターステアを当てて発進! よしキマッタ! カッコイイぜオレ!

「クラゴン、ピットロード速度ね!」

そういえばそんなもんもあったな。ふう、
危ないところぢゃったわい。


コースに復帰したときはクラス10位くらいまで後退。みんなピットインしてないんだから仕方ない。ここでプッシュしておくと、みんながピットインを終えたあとには浮上しているという、
シューマッハな展開が待ってるぜ!

だけどひとつ問題が。

行っていいって言われても、どこまで行ってイイんでしょうか。金曜くらい行くとタイヤが5周で終わっちゃうし、といってプッシュしないと順位は上がんないし。

要はオレのパート約80周(長っ!)でタイヤをどう磨耗させていくか。それともタイヤ交換して40周×2にするか。初めてのレースなんだから知らん!

とりあえず金曜の反省を活かして、クルマを横にしないように、確実にトラクションをかけてタイヤの消耗を減らしつつ、その走りで可能な限りのタイムを出す。

ということにしてみました。

タイムを出すためにクルマに負担をかけるんじゃなくて、負担をかけないようにして、その中で出来るだけのタイムを出すってカンジでしょうか。

だってホントにわかんねーんだもん。

十勝とはタイヤもクルマも違うし、24時間走るか4時間走るかでペースが全然違うからね。


60周経過時点のリザルトを見るとクラス8位。まだピットインしてないチームがほとんどです。

70周前後、全チームがピット作業を済ませたころに監督から無線が。
「現在2位と60秒差、4位と28秒差の
3位!
「了っ解〜」

シューマッハ作戦成功! ひょっひょっひょっ!

すごいよねえ。ピットインしたときは3位より20秒も遅れてたのに。これはオレのペースもさることながら、
ピット作業の速さ! もしかしたら他よりも10秒は早かったんじゃないかな。いい仕事してますね〜。


               混んでるぞ〜!                  追い上げ中!


さあ、とりあえず3位までは来た。

大変なのはここから。なんてったって、人よりも20周も多く走らなきゃいけないんだから。それに4位とは30秒も差がないから、タイヤ交換にピットインしたら絶対に抜かれる。といってピットインしても3位をキープ出来るようにするには、今よりも20秒は離さないといけない。

う〜ん、困った。

交代から約30周経過、80周時点では順位もタイムほぼ変わらず。タイヤ交換をするんだったらこの10周くらいにしないといけないんだけど…。

「クラゴン、タイヤどう? 大丈夫? ザッ、…」
「今のペースでは行けるけど、ペース上げるのは無理ですよ〜」
「ザッ、…」
「聞こえてます?」
「ザザッ、…」
「おーい」
「ザザザッ、…」

放置プレイ開始!!

不思議なもんで無線とかって必要なときに壊れるんだよね。ピス兄のときからおかしかったみたいなんだけど、土曜までは全く問題なかったのに困ったもんだ。

あと50周もあるのに、タイヤ交換するかもしれないのに、会話不能の放置プレイは困った。

前とは65秒差、後ろとはまだ25秒差くらいはある。


              放置プレイ中              夕日がまぶしいぜ!


さらに10周、タイヤ交換リミットの90周前後。まだ行けそうだけど、レースはあと40周もある。ここまでの40周でチェックしてきたタイヤの磨耗から、残り40周を走り切れるのかどうか、走りながら必死に計算。

無線がダメでも、ピットインの合図さえ出せばタイヤ交換は出来る。だけど、ここでピットインすれば5位には落ちる。ピットインの判断はタイヤの状態を知っているドライバーにしか出来ない。

ん〜〜〜〜〜〜〜〜…
最後まで行くか!

そうと決まれば、
よし! 男らしくペースダウンだ!



だって2位にはどーやっても追いつかないんだもん。5位まで落ちて3位に入れば全ておっけー! 勝てば官軍! 勝ってないけど。

大変だったのはピットですよ。どんどん4位が追いついて来るわ、無線は通じないわでてんやわんやの大騒ぎ(笑)。タイムが落ちてるってことはタイヤが終わったのか!? とも考えられるでしょ。

ストレートを通過するときにピットをよ〜く見てみると、
ピストン兄貴がサインボードを出してたり、市嶋さんがペース上げろサインやってたり、監督は心配そうにコッチ見てたり、もう全員参加型レース。

4位との差は25秒だったのが20秒、15秒、10秒と、どんどん縮まって
110周時点では6秒差! まだバックミラーには写らないけど、そろそろ射程圏内かな。

これも完璧に予定通り。

去年のシビックレースは10周。だから10周の磨耗だったら完璧にコントロール出来る。耐久用タイヤということを考えるともっともつだろうから、15〜20周と考えてもいいハズ。

つまりラスト20周で、ある程度タイヤが残っていれば、
全開で行っても大丈夫っちゅーことですわ。

この状況で一番ダメなのは、ラスト15周や20周で「タイヤがダメだっ!」って言ってピットインすること。タイヤ交換してもリカバリー出来ないし、どうせ交換するんだったら最初から速いペースじゃないとダメ。F1の2ストップと3ストップみたいなもんだからね。

そんなの知らないピットでは、みんなしてペースアップのサイン。手がいっぱい出てて
何が何だかもうわかりません(笑)。

ラスト20周、
「よっしゃ! イケルゼEK!!」と言いながらペースアップ! タイヤはもちろん、ミッションが大丈夫だからシフトアップも速くして、コンマ1秒を削る! コンマ1秒速いペースで20周走ったら2秒だからね。今ある6秒差の3分の1をシフト操作だけでかせげることになる。

そのペースアップのキモになったのがSPコーナーの走り。


   SPインコーナーはショートカットギリギリまで攻める!            縁石はまたぐためにある!
     SPインとアウトの間も縁石の外まで使うぜ!           SPアウトコーナーはココだ!


プロのレースファン、モンツァ会会長の柘植さん(名古屋在住、公務員)をして、
「あのSPはインチキやな」と云わしめたほどの速さでした。

予選を見てた人にも
「クラゴンのSPコーナー、狂ってるよね」とお褒めの言葉をいただきました。

自分では普通のつもりで走ってるからわかんない。オレも
オレの走りを外から見てえ!(←無理)。

この走りとピットウオークのオトコ写真を見比べると面白いなあ。

しつこいけどSPインの連続写真をくらえ!



ペースアップしたオレは、70周走ったタイヤとしては
驚異的な1分38秒台を連発! そんなに出るんだったら最初っから出さんかい! と、あとで監督に怒られました。

最後まで三味線だ!

6秒だった差を
8秒に開いてラスト5周! よし予定通りだ!

4位の人はここであきらめたね。長いレースの中で勝負になるポイント、つまりこの2〜3周で差を広げれば逃げられる、あるいは追い抜けるというポイントがわかって、久しぶりのレースだけどちゃんと逃げられた。
1ポイント差のチャンピオンは伊達じゃないぜ!

40周も逃げる展開にちょっと息が詰まってきたので、軽〜く
ゆる&呼吸法を一発。うお〜っとゆるくなっちまった。

タイヤもズルズルでかなりゆるくなっちゃってるけど(笑)、アンダーとオーバーをうまく使い分けてイイカンジ。フロントが減ってきたらオーバーっぽく走ってリアを使い、リアが減ってきたらアンダーっぽく走ってフロントを使い、前後バランスが崩れないようにコントロールしちゃったりして。

ラスト2周。ピットから
「R」サイン。

「R」って何だ!? インテ 仮面ライダーBLACK RX? 究極超人あ〜る? それともノストラダムス的MMR?

次の周
「R+ポンプ」の即席サインが。リザーブタンクでした。

耐久マシンだけあって、ガス欠になっても2周は走れる予備タンクを積んでるんですね〜。ラスト2周でリザーブに切り替えたのは、ガス欠になってから切り替えてもすぐには切り替わらないから。何秒間かはエンジンが止まっちゃうからね。

そのタイムロスで追いつかれないように、的確な指示でした。

リザーブタンクのサイン知らないで3位走ってるのもスゴイけど(笑)。


ラスト1周をマッタリと走り、8秒差をキープしたまま3位でゴール!

よし! S耐(実質)デビュー戦、初結成のチーム&ドライバーでポールto表彰台だぜ!


  ゴールの瞬間、ちょっと見にくいけど盛り上がるピット      ちょっとギリギリだったね なんて言ってたかな


bX5 BP J−WAVE AP1 ED 
クラゴン/ピストン西沢組

クラス4 3位表彰台 (総合23位) 

走行時間 
クラゴン    2時間12分46秒943 
ピストン西沢 1時間19分46秒380


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