2008 BF Goodrich Endurance Championship NURBURGRING




2008年の目標、2レース出場を達成!…のはずだったんだけどなあ。

と〜ってもニュルらしい展開が待っていました。でもオレは元気だぜ!


みなさん御存じのようにニュル参戦には、クラゴン部屋の指南の質を上げるためのトレーニングという面があります。実際に走ることで新しいドライビングに関する発見があり、オレ自身のスキルも上がるわけで、コレを年に2回もやったらエライコッチャになってしまうんではないかというところがスタートです。

こんなところに寄り道しました交渉の結果、2006年にスイフト(日本名:カルタス!)でお世話になったチョーニアモータースポーツのBMWM3で、BFグッドリッチ耐久選手権(現地通称:VLN)の4時間レースに参戦することになりました。VLNっていうのはニュルで開催されている10戦のシリーズ戦で、要するにニュル耐久シリーズだと思ってもらうといいかな。24時間と同じレギュレーションで開催されていて、主要チームもほとんど同じです。出てないのは日本チームだけ(笑)。

このVLNの実績で24時間レースに出られるかどうかを判断されるということもあり、現地では24時間のための登竜門といえるレースだそうです。日本にいるとほとんど24時間しか知ることができないけど、それはお祭りの一番楽しいところを知っているというだけで、ニュルのレースの本質はこのVLNにある!と言っても過言ではないでしょう。

それにしてもM3でニュルのレースに出る日が来るとはねえ。ずいぶんと来たもんだ。排気量1300cc以下のSP1からはじまって、3200ccのM3はSP6クラス。最大排気量がSP8(たぶん無制限)なので、上に2つしかありません。しかもエントリーリストを数えてみたら、総勢200チームを超える中でSP7とSP8は合計でわずか19台!

まあ出るだけなら金を払えば出られるけどね。ここまで積み上げてきた実績がなければ、オレの資金力では手も足も出ないクラスですよ。

バックミラーを見続けないでいい幸せがココに(笑)。

ドライバー編成は現地ドライバーのミハエル・ブルーゲンカンプ君と、諸事情によりMr.X。個人的な事情で表に出たくないそうです。ブルーゲンカンプ君は絵にかいたようなナイスガイ。いやマヂで(笑)。実力もなかなかで、Mr.Xと合わせて「こりゃバッチリOKのドライバーチームになったぜ!」と喜んでいました。

やっぱりニュルにおいてドライバーは超大切ですよ。

オレは今年のニュル24時間でクラス準優勝になったのだって、事前に「遅いヤツと壊すヤツはNGだぜ!」と思いっきりうるさく言っていたから。ワンミス、ワンクラッシュで全てが終わるニュルにおいては、誰と組むかでレースが大きく変わります。フレパーさんちのマニュエルがそのあたりを十分理解して、妥協ないチームを作ってくれなきゃああは行かなかったでしょう。



というのが参戦前のあらすぢ。それでは金曜の話から始めましょう。

金曜のプラクティスで、にゃにゃんとレーシングカー親方走見をしてしまいました。

ドッギャーン!

レーシングカーで、金曜のプラクティスで、助手席をつけてチームやドライバーのゲストを乗せて突っ走る! ドイツ人ってマジメそうに見えてしっかりイカレてるなあ(笑)。こんなこと日本じゃ考えられませんぜ。これも自己責任の国ってことなのかもしれないけど、いっくらなんでもヤバイでしょ(笑)。

でもスポンサーへのサービスという意味では、これ以上喜んでもらえることは絶対にない! 自分が応援しているドライバーやチームのマシンに実際に乗れるなんて、最高のサービスですよ。これ以上スポンサーの理解を得られる方法をオレは知りません。

日本のレースの環境を考えると、もうタメ息しか出ねえ。

そんな偉そうなこと言えるほど日本のレースに出てないけど(爆)。

レーシングカー親方走見のエジキ(?)になったのは、モンツァ会の柘植会長(通称K長)とクラゴン部屋弟子のO滝さん。ご両名とも現地集合現地解散で駆け付けてくれました。

「K長、いちおうなんですけど、死んじゃってもいいですよね?」
「質問の意味がわからん(笑)」

これくらいの覚悟がないとできないけどね(笑)。


プラクティスはオトコ連発で実際には2周しかできませんでしたが、M3は乗りやすくて全く問題ナシ。

予想通り、シャシーもアシも完全にパワーを上回っていて「370馬力も出てるんかな」と思うくらいです。ストレートエンドでキッチリ280km/hが出たから、馬力も出てると思うけど。でもそうじゃなかったらお馬さんが足りないと思うくらいの乗りやすさです。

アシは狙った通りのちょいアンダー。オレだったらもうちょっとアンダーが少ない方がいいけど、安定感という意味ではもう文句はどこにもナシ。こういうところからスタートしてちょっとだけセットを攻めたりすると、いいのが出てくるんだよなあ。

リアがちょっと粘りすぎなので、バネかダンパーを柔くして、コーナーの奥でもうちょっと回りこむようにしたらエエかなというカンジです。そうすれば低速コーナーのトラクションも増えていいとこばっかり!になるかどうかはわかりませんが、進入の一発目の反応はいいからフロントじゃなくてリア、という分析です。

あとビックラこいたのは、ボディ剛性もさることながら、サスの取付剛性がハンパねえッス。

とにかくタイヤの位置決めがしっかりしてて、ニュルならではの縦Gがかかってもアライメントがズレない。だから直進性がいいし、先の挙動を読みやすい。クルマの良し悪しっていうのはこういうところなんだと再確認できました。馬力とかタイヤの幅じゃねーな。こうじゃなきゃ370馬力で乗りやすいとは思わないよね。

実はオレの318Ciもそのへんの正確さが気に入って買ったわけで、いい買い物したなあ。エへへ。左ハンドルの違和感もじぇんじぇんなくて、もうキャッシュバックの予感です。



パドルシフト可能のSMGも超絶ババッチリで、もうゲーセン感覚ですよ。ちょっと反応が遅かったりしつつも、普通の人だったら間違いなくMTよりも速いでしょう。何よりドライビングに集中できるのが、ニュルでは効果絶大でした。でもオレだったらMTのほうが速いかな。といちおう言っておきましょう(笑)。

夜はドライバー全員+ゲストで夕メシを食いながら、セッティングの相談とレースの作戦の相談。楽しい時間でした。



さあ問題のレース日がやってきましたよ。

土曜ワンデイ開催のため予選が朝8時から、決勝が11時半からというスケジュールです。なんで土曜かっていうと、日曜はツーリストの走行日だから。たぶん。

日本だとなんじゃそりゃって話になっちゃうけど、土曜に予選&決勝なら日曜休んで会社に行けるわけだし、サーキットとしてもツーリストタイムをつぶさないでいいから都合がいい。観客だって予選も決勝も同じ日に見られるから、やっぱり都合がいい。しかも1日少なくなればメカニック代だって安くなる。こりゃいい作戦じゃないですか。

S耐だってもっと安く効率よくできるはずです。前座のサポートレースをどうするかっていう問題はあるけど、果たしてサポートレースを気にしてる余裕があるのかっていう気もするしね。参戦費用が安くなって、サポートレースに出てたみなさんがS耐に出られるようになったら、それはそれでOKだとオレは思うんだけど、どうかな。

オレ自身シビックやミラージュをやってたときには、サポートレースだと走行時間が余りに少なくて、日曜ワンデイのマッタリ東北シリーズのほうが嬉しかった記憶があります。

それはいいとして、まず8時のフリー走行が霧で軽〜くディレイ。いや、このへんまでは予想してましたよ。霧は毎晩出てたし、もうオヤヂのホテルを出た時点でこんなカンジだったから。

そして9時にまたディレイ。9時20分にまたディレイ。9時40分にまたまたディレイ。まあ、霧は外を見りゃわかりますんで、問題ナシです。そして10時になって、コレでやるのかよ!というタイミングで予選開始のアナウンスが!

不思議というか何というか、ピットロードにマシンが並び始めたあたりで霧が晴れて、ピットから1コーナースタンドが見えるくらいになりました。

24時間の雨でスタートがディレイしたときもそうだけど、ニュルのスタッフはなんでこんなにピンポイントでコントロールできるのかな。プロの仕事というほかありません。

そして、まず雨経験のあるMr.Xからコースイン。GPコースをショートカットしてピットインし、マシンチェックをして予選アタックへGO!

…と思ったら、またピットイン???

よく見たらピットロード信号は赤。予選中断です。

オレ 「まだ北コース走ってないよね?」
Mr.X 「走ってない」
オレ 「じゃ状況はわかんないよね」
Mr.X 「ぜんぜん」
オレ 「じゃいちおうビデオ止めとくわ」

10時半、11時、11時半、全く開始の気配がねえ。あまりヒマなので待機中のトラックの中を撮ってました。


そしてMr.Xから「こりゃ時間を短縮してやる展開じゃね?」という推測が。もうスタート時間だし、それはしょーがねえなと。

12時、ドライバーズブリーフィングの召集がかかりました。



次々にモニター映し出されるオイル処理作業の写真。オトコになったマシン。ピンボケながらドリっているオイル処理車(笑)。そして主催者が何かを言って、拍手するドライバー達。オレはドイツ語はわからないのでもちろんどんな事態が発生したのかはわかりません。

Mr.Xに聞いた言葉は
「No race today.」

「THE END?」「Yes!」

マヂで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!


現地からオトコ日記にも書いた通り、ディーゼルマシンのタンクが壊れて、燃料=軽油をまいたのが原因です。2時間に渡る処理作業でも事態は好転せず、チェックに出動したセーフティカーのアウディTTクワットロが2回転スピンを演じた時点で全ての可能性は断たれました。

オイル処理を見たことがある人はわかると思うけど、たかだか5Lくらいのオイルでもかなり広範囲に散って、しかもツルツルになってしまうわけですよ。それがレギュレーション最大タンク容量の100Lもブチまけられたとしたら、完全に無理でしょう。

しかも揮発しやすいガソリンと違って、軽油は舗装の奥に入り込んでしまうということで、当日の情報では約800mに渡って舗装の張り替えも検討しているということでした。その後どうしたかは知りませんが。

せっかく行って決勝どころか予選の1周も走れなかったのはひでえ話ですが、これもレース。逆立ちしてもダメなもんはダメです。

拍手はレース開催への努力をした主催者への拍手であり、状況の説明は的確で、ドライバー全員が中止が最善の判断だと納得できる素晴らしいものでした。

それに相手はニュルブルクリンクですから。走りたいとかなんとかっていうレベルの話じゃないんだよな。だって死んじゃうんだから。マヂで。

形はどうあれ、無事に終われることを喜んで撤収!! もう飲むしかなかったな(笑)。


※クラゴン部屋弟子のヨシダさんがYoutubeにクラッシュの模様がアップされているのを教えてくれました。
動画1  動画2
いや〜もう残念だとか全く思わないね。無事で良かった。それだけで十分。
ヨシダさん、ドイツ人の人(たぶん)、ありがとう!

というわけでMr.Xとブルーゲンカンプ君&彼女、K長&O滝さん&オレでケルンへGO!

ケルン大聖堂見て、ステーキ食って、立ち飲み屋でビール呑んで、酔っ払いに絡まれて(笑)、ドイツ5回目にして初の観光ですよ。

あんまり覚えてないんだけど(爆)、ケルンは歴史的な遺産と現代の街の融合が見事だったな。去年組んだヨッヘンが「ケルンに行け。ケルンにはドイツの全てがある」って教えてくれたけど、それもあながち誇張でないような雰囲気です。

かわいそうなのは1周も乗れなかったブルーゲンカンプ君で、かなりヘコんでました。でも取り乱したりすることがなくて、人に気を使える超ナイスガイ。ホントにいいヤツでした。



日曜はツーリスト時間をみんなで走る予定だったんですが、当然コースは走れる状況じゃありません。ただ、レーシングカー親方走見に満足したK長とO滝さんは、完全に自分で走る気がなくなっていたので全く問題ナシ。

オレとしては日曜走れる予定でおふたりにお伝えしていたので、申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、価値を正しく理解してくれる人でよかった。あ、死んでもいいくらいだったっけ(笑)。

そんなわけで今度はシュツットガルトにGO! ついでに途中にあるホッケンハイムにもGO!




詳細は書いても面白くないので、行った人のヒミツ。

写真を見てイロイロ妄想をふくらませてください。



さて、今回のレースについてまとめましょう。

まずお伝えしておきたいのは、この程度のことでオレのニュルチャレンジには何の影響もないということです。

確かにレースはできなかった。時間も資金も使って、そのわりには走れなかった。これは事実で超残念かつ超もったいない話です。

ただ、オレのドライバーとしての評価には全く何の影響もないどころか、M3をペロッと乗ってペロっと攻略したことで、オレの評価はザ・ウナギ登り!

今回のレースはもともとニュルの住人への第一歩だったわけで、こういう「エクストリーム」な経験はまさに望むところ。この緊急事態を協力して乗り切ることではじめて、チームや他のドライバーの信用を得られます。向こうのチームとの関係でいえば、後退するどころか思いっきり前進してます。

いちいちレースに出られなかったくらいでガタガタ抜かしてるようじゃ、海外でレースなんかやってられませんぜ。ハラを据えて事態に臨めば、何が大切かは自ずと見えてきます。

ドライバーもマシンも無事ならまたいつでもチャンスは来ます。

「せっかく日本から来たのにこんな展開でSorryだぜ」と繰り返すチームに対して
返した言葉は
「No probrem」のみ!!

オトコ同士にムダな言葉は一切不要!

でぃすいず
O.YA.KA.TA!


んで、その結果、来年のVLN6時間レース、ニュル24時間レース、ドバイの24時間レースなどなど、オファーが来まくって結局選び放題になっております(笑)。どれにすっかな。

レースも走らずに来年のオファーが来る。これぞ完全勝利!

M3にも乗ったしケルンにも行ったしシュツットガルトにも行ったし、目標だった楽しいニュルだけはバッチリ完遂してしまいました。半分くらいニュルじゃないけど。これで来年もヤル気が出てきたぜ!

みなさん応援ありがとうございました!



クラゴン応援団のみなさまへ

クラゴン応援団にご加入いただいたみなさんは、今回も応援いただき本当にありがとうございました。おかげさまで一触即発の事態の中、後退するどころか来年に向けて大きく前進することができました。

たぶんみなさん不安に思われている車載映像については
フリー走行中に撮影を完遂しました!

初乗りM3のファーストラップと、K長を殺し損ねた(笑)2周目の後半まで(スミマセン、赤旗連発でテープが切れました…)の映像を撮っています。自分で言うのはナンですが、今までと迫力が全く違いますので、少ない周回数ですが、みなさんに喜んでいただけるものと確信しております。

あとアウトバーンでも撮影してきました。

もちろんステッカーも買ってますので、レースこそグダグダでしたがお土産の準備はバッチリOK!

今回は早めに発送する予定でおりますのでご期待ください。


ただ、予選すら1周も走らずに終わってしまったのも事実なわけで、万が一「せっかく応援したのにこんな状況じゃ納得いかん」という方がいらっしゃったら返金をさせていただくことにしました。予選スタートの時点でレースとしては成立していますが、やっぱりこういうのは気持ちの問題ですから。

返金をご希望される方はメールでご連絡ください。