DAY8
行雲流水


長いニュルツアーが終わり、ついに帰る日がやってきました。

まあ、DAY7で終わっててもいいんだけど、せっかくだから
日本一長いレースレポートを目指して、言いたいことを全部書いてしまいましょう。


来たからには帰るのが当然なんだけど、空港に着くまで帰ることをすっかり忘れていて「あ、
今日これから帰るのか」と突然気付いてしまいました。相当やられてるねえ。

ドイツに来てから1週間。明日のことも考えないで、その日のトラブルを乗り越えることに全力だったってことでしょう。エントリーのこともタイヤのこともスペアパーツのことも心配しなくていい日が来るなんて、想像することもできませんでした。


レース後、みんなでサーキットの近くのレストランに行って食った夕メシ。この時点でメカさんたちは
40時間くらい寝てません。ドイツでは右のカツレツみたいなの(シュニッツェルといふそうです)が有名だそうで、しっかり食ってきました。夜明けのレストランクロワッサン事件があっただけに、左のスープがごっついヴォリュームで超満足! 思わずカツを残してしまうところでした。

それから、ニュル〜フランクフルトへ2時間のドライブ。と書くと1行なんだけど、レース後ですよ。

24時間レース後に2時間200kmの移動なんて
自殺行為。 全てはM氏の計画ですが、知らないってのは怖いもんです。もちろんメカさんとヘルパーさんたちは全滅で、オレが運転しましたよ。ニュルで5スティント走ったあとに。オレだって24を全て見終わる時間くらいは寝てないのに(笑)。

奇跡的にホテルまでたどりついたのが
午前1時。よせばいいのにちょっと寝て復活したメカさんたちと深夜もやってる飲み屋へGO(笑)!! こうなったら行きつくとこまで行くぜ!

そのままM氏のネタで超盛り上がり、ホテルへ戻ったのが午前5時。飛行機は12時発だから10時には起きて………と最後の力を振り絞って目覚ましをセットしてオチました。

翌朝(数時間後)、ドライバーは奇跡的に起きてロビーに集合していましたが、完全に予想通り音沙汰ナシのメカさん部屋へ行ってドアを30回くらいシバキ上げたところで「ふえ? もう時間???」の声と共に、武ちゃんとT橋さんが蘇生(笑)。みんなであわてて空港に向かったのでした。


恒例の面白いもの紹介です。
Nissin CUP NOODLE!

味は日本とほぼいっしょで安心しました。
アプリリアの原チャリにもシビレるけど、「31レーシング」の不自然なカンジもいいよね。これじゃレーツングじゃん。

ドイツチームの移動車両です。なんでカタカナなんでせう(笑)?
これがウワサの1杯2万円だった紅茶(笑)。
さすがドイツ。ルフトハンザの座席もレカロです。

アルマゲドンのスペースシャトルの座席もレカロなの知ってた?
ドイツではじめて食したのが、クルマを借りに行ったドイツ三菱でごっつあんした、このりんごジュース。Mitsubishi Germanyのみなさん大変お世話になりました。

仲介していただいた中谷さんと、日本の三菱の担当者様、本当にありがとうございました。
ニュル最初の朝メシ。典型的な西洋の朝食ってカンジですが、ウインナーは激ウマです。
コブレンツのホテルには面白いものがいっぱいありました。

高さ30cmくらいのでっかいチェスが(笑)!
なぜか外にも(笑)。

このでっかいチェスセットは3つか4つあったような気がするなあ。
ホテルに貼ってあったスタッフの顔写真。

つまりこのメンバーがお世話しますってことなんでしょうけど、これが個人主義ってヤツですかね。

聞いた話では不動産屋なんかも、会社ではなくて個人を信用して頼まれる仕事だそうです。

コンビ二の中にしか見えないけど、実はガソリンスタンドの中。パンを作って売っているところもあるくらいです。

自動車を使う国だからスタンドでいろんなものを売るのが合理的なんでしょう。
フランクフルト空港にあったトヨタF1。

TMGの本拠地、ケルンまで最寄の空港だけのことはあります。
ゴール直後、地元TVのインタヴューに答えるD−Rights号の通訳さん。

優勝をとっても喜んでました。

こっちは通訳なしだったけどな(爆)!
給油中に何やってるの? と思ったら、エキゾーストに缶をかぶせないといけないそうです。あとで聞いた話ですが、最初はそれを誰も知らなくて、2〜3回原因不明のペナルティをもらってから気づいたんだとか。

缶詰を買ってきて中身を食ってカバーにしたそうです。

武ちゃんとT橋さんはホントにすげーぜ!

このテントと後ろのコンテナがウチのチームの住処です。

ライトも発電機もないから、コンテナの中にローソクを並べててねえ。まわりのチームは東洋人が怪しい儀式でもやってるようにしか見えなかったでしょう。

今は笑える(笑)。

表彰式でバッタリ会ったユーゲンさん。岸本さんと話をしています。

スタート前にはわざわざいろいろ教えに来てくれましたが、終わってみれば向こうはエンジンブローで5位。

まだまだだな(笑)。


このコンテナ生活がホントにすごくて。

ヘルパーで来てくれたラーメン大好き
小池さん(笑)がドイツ人に取り囲まれてることがあって、みんなで「なにか揉め事か、絡まれてるのか!?」と思ったら、囲みが解かれたとき両手にタバコを持って立っていたということがありました(笑)。

もう完全に
浮浪者扱い(笑)。現地の人からホドコシをしたくなるくらいかわいそうに見えたんだろうなあ。小池さんのキャラがおいしすぎるってこともあるのかな(笑)。

もうこんな体制じゃ絶対にやらないけど、これが本当の海外遠征ってカンジがしていいよねえ。

日本チームの多かった2005年。日本のレースの体制をそのまま持ってきて現地でのコーディネーターも雇って、何の不自由もなくレースをしているチームもありました。すごーくうらやましいし、スポンサーをとってやるレースとしてはそれが100%正しいけど、それで本当のニュルを体感したことになるんですかね?

それじゃサーキットはニュルでも、結局は日本のレースと同じでしょ。日本のレースをお引越しして走ってるようじゃ、ニュルを味わったとは言えませんな。

ウチより悪い体制のチームなんてあるわけないから、好きなこと言えるなあ(爆)。

再三書いていますが、このひどい体制に中谷明彦選手やラックさんは一切関係ありません。中谷塾の卒業生が集まっていて、LUCK Racing Teamでエントリーをしていても関係ありません。この件に関しての疑問や質問をすると大変迷惑がかかりますので、ご遠慮ください。もう十分に迷惑をかけている人がいますし。

M氏は便宜上設定した非実存の人物です。モデルが実在するかどうか、もしくは誰がモデルか、でなければ「コイツは○○じゃないか」など、現実に存在しない人物に関しての質問、内容への抗議は受けられません。



ここで必殺の
文化編に行きましょう!

まず不安だった
言葉。英語は通じる人には通じますが、通じない人には全く通じません。特にニュル付近では英語で話しかけると「英語ノーノー」とドイツ語で言ってるんだろうな〜、というとっても日本的な光景を見られました(笑)。だけど話せる人はペラペラで、ドイツ三菱さんちの所長やマネージャーはバリバリにできます。

日本みたいになんとなくしゃべれる人がいなくて、しゃべれるかしゃべれないかハッキリ分かれているのが、ヨーロッパの階級社会なのかのう、と勝手に考えてましたが。日本みたいに無意味に学歴を持たなくても、手に職を持っていれば生きていけるってことなのかもしれません。

とっても意外で抗議が来るかもしれませんが、オレ、英語しゃべれます。とってもあやしいけど(笑)。でも言葉っていうのは必要になったときに使えないとダメでしょ。海外レースのチャンスが来たときに、ちゃんと実力を発揮できるようにしておくのは当然のことです。実際にとっても必要だったし。

ただ、
某所長の「付け焼刃の語学よりも魂の入った日本語のほうが通じる!」という意見もかなり本質に迫っていて、どっちがいいんですかねえ(笑)。

これって自分の意思をはっきり言うっていう日本人不得意のことと関連が深いですよね。勘違いすると「絶対に自分が悪いと言っちゃいけない」とかいう妙な話になってしまいますが、つまり「オレはこう思う」「いやオレはこう思う」「じゃあこうしよう」という意見を日常的にぶつけ合う習慣があるということかもしれません。

特にタイヤの話にいったドイツダンロップでは、ノーと言ったら絶対ノー。そこから
代替案を出せるかどうかが明暗を分けます。

自分の意見をはっきり言うなんてレースやってる時点でできることだから、普通の人が困るのとはちょっと違うかも(笑)。

もしこれから海外でのレースを視野に入れて活動する人がいたら、
英語はできて当然だと思ってください。「ドライバーなんだから速ければいい」というのは、それこそF1ドライバーになるくらいの才能がある人で、しかも通訳を雇えるチームに所属している場合の話。日本語でも勝てるレースをするのは大変なんだから「言葉くらい何とかなる」なんて甘い期待を持たないように。

ミハエル・シューマッハはドイツ語、英語、イタリア語までできるんだから。何年かに1回のチャンスをモノにするために、準備をしておくのは当然のことでしょう。

ただし、その語学をプラスの意味で使う機会を作るには、まず速さが必要です。メーカー系ワークスチームに入れるくらいのとびっきりのドライビングを身に着けるか、交渉のテーブルにつけるドライビングと自分で交渉をできる語学を身につけるか。遅いヤツと話をしてくれるチームはどこにもありません。

でも個人的には英語はキライです。だって言葉っていうよりも、記号そのものじゃん。あんまり人間の文化ってカンジがしないよねえ。


そんでもって


ドイツの主食は
フライドポテトと肉。新鮮な魚や野菜は期待できません。

一番の問題は
米。米は都市、郊外含めて一切ありませんでした。フランクフルト市内の有名な日本料理店にでも行って、やっぱり日本と違う米が出てくるくらいが限界だと思います。オレは肉があればOKなので、あまり気になりませんでしたが、米の禁断症状が出ている人が何人もいました(笑)。

帰りの飛行機の中で、寝てたらメシの時間を過ぎて、食後のお茶を配る時間なっちゃってたことがありました。スッチャデスさん総出でお茶を配っていたので、超ハラが減っていたのにこっちは後回し。寝起きと空腹時は取り扱い注意です。

ついに
ゴゴゴと裏クラゴンが波紋疾走しそうになったところで、やっとメシのワゴンがガラガラ到着。フッと見たら、すでに懐かしい気配も漂う、三角でコンビニに大量に並んでる物体X=ザ・オニギリが!

波紋疾走をおさえるために、
ちょっと無理を言ってオニギリをGET! それに気付いたチームのメンバーから「それどーしたの!」という質問とも非難ともつかない声を聞きながら瞬間的に完食! それくらい、みんな米に飢えます(笑)。

不安な人は
炊飯器と米を持参でどうぞ。

食文化が豊かな国に生まれたっていいねえ。



そして
レースの話。

日本ではまずクルマは危ないもので、レースも危ない。だからサーキットを作るのに認可が山ほど必要だし、認可をとっても地元の人が反対運動をすれば、それで終わりです。

腫れ物を触る、という表現がピッタリでしょう。

ドイツは、レースは危ない、クルマは危ない、ニュルは危ない、そんなの当たり前じゃん。危ないの嫌だったら走らなきゃいーでしょ、という世界です。ファーストカマーのときに、レンタカーで普通にニュルの練習をはじめてしまったことに驚きましたが、そんなこと現地じゃ当たり前。

クルマでブッ飛ばして走るということに抵抗がないどころか、
ブッ飛ばさないんだったら乗る意味がないくらいの話でしょう(笑)。

そーすると道路を
馬車が走ってた国か、をかついでいた国か、という差なのかなという気もします。

日本人の文化として異質なところがモータースポーツがサッカーや野球のようにメジャーになりきれないところであり、かえって魅力的に感じるところなのかもしれません。このへんはちゃんとリサーチしていないので、要調査ということで。

どこかで聞いた話で「海外に出ることで自分が日本人だということがわかる」という話があって、実はとっても楽しみにしていたんですが、そうでもありませんでした。

まあ、普段からクラゴンだしなあ(笑)。メディカルチェックでドクターに
「日本語わかりますか?」と大マジメに聞かれたこともありましたっけ。

レースといえばすんげービックリすることがあったんですよ。

ラスト3時間くらいになってから、何かの
カタログみたいなものを持って、ウチのピットに来るドイツ人の人がいたんですよね。最初は何かな〜と思うだけで、特に気にしてませんでした。こっちもレース中で、まさにロアアームのブッシュが〜!とかいってる最中だったから(笑)。

最初はユニフォームかなんかだったのが、別の人が来てパーツの話になって、ラスト1時間くらいで
ピレリの人が来て、そこで謎が解けました。

なんと
スポンサーするぜっていう話だったんですよ!

10以上あるクラスの中で一番排気量が少ないA1クラスなのに、しかもまだゴール前なのに、今度ピレリのタイヤをサポートするだと〜! いや、あまりの事態に混乱していましたが、これが本来レースで上位を走るっていうことなんです。

ニュルだから特別なのかもしれないけど、結果がよければサポートが付くのが当たり前。いくら速くてもレギュラーシートがない(爆)国内とはエライコッチャな違いです。それだけレースの結果を出すことがステータス(日本語だとなんか成金っぽいイメージがある言葉だな)で、サポートするほうも金を出せば見返りがあるってことでしょう。

こんなところにもレース環境の差を痛感してしまいました。それにしてもレース中に営業が来るなんて、カルチャーショックもいいとこですよ。

これだけでもいい経験でした。



最後に
ニュルブルクリンクについて。

NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組で日産のテストドライバー頭、
加藤博義氏を取り上げていたんですけど、みなさんご覧になりましたかね。

加藤氏は
R32〜34までの開発を担当したザ・オトコ! そのエピソードの中であったのが、R32のテストで初めてニュルに行ったとき、恐怖のあまりアクセルを踏めなかったそうです。当然テストにならず、現地のドライバーが代わってテストを担当したとか。

これはニュルを端的に表現してる話で、
メーカーのテストドライバーがビビッて走れなくなるのがニュル!

オレ自身GT4にはとってもお世話になったし、凄まじい技術でコースを再現していることを実際に確認してきました。ただし、GT4をやったからニュルを
体感したと思われちゃ困る! バーチャルの世界はあくまでも疑似体験。現実を体感するのとは別のことです。

ゲームをやったりビデオを見たりしただけで、ニュルのことを知ったような顔をするのは、現実とバーチャルの区別がつかない子供と同じです。

GT4で練習した上で一度行ってみましょう。ニュルの話をするのは一周でも走ってから。森の中を走るのが峠みたいとか、自分の経験を当てはめただけの感想でニュルの話をしてほしくないな。峠みたいに簡単だったら100チームもリタイヤしないよ。

そんなサーキットに必殺のぶっつけ本番体制で行って入賞したんだから、よくやったと自分でも思います(笑)。
ニュルは楽しい究極のサーキット! 行けばこれからのクルマ人生が変わること請け合いですぜ。

ちなみに、クラゴン部屋の
入門者向け指南は、オレ自身がニュルで試した攻略法をベースにしています。絶対にクラッシュしないでいかにタイムを出すか。何てったって実際に24時間生き残って入賞したドラテクなんだから。教科書のドラテクなんか吹っ飛ばしちゃうよ。


ドイツの話は思い出したらコソッと足していきます。



そして日本へ。

空っていうよりも宇宙の色だよなあ



みんな
こんなに大変なレースはもう二度とやりたくないと言っていました。オレも同感。こんなレースはもうゴメンです。

だけど不思議なことに、来なきゃ良かったという人は誰もいませんでした。

オレも同感!

今回のメンバーはまぎれもなく戦友。いつ、どこで、何年ぶりに会っても、マブダチでいられることでしょう。そして、一生今回のネタで盛り上がれるでしょう。

お互いにどこで何をしているかわからず、でも全力でそれぞれの問題に取り組んでひとつのことを成し遂げた、素晴しいメンバーです。

最後に、そんなオレたちにふさわしい言葉を。
「我々の間にはチームプレーという都合のいい言い訳は存在しない。あるとすればスタンドプレーから生じるチームワークだけだ」
by公安9課荒巻課長

またみんなでレースやりましょう!


長いレポートに最後までお付き合いいただきありがとうございました。実にレースから1年が経過し(爆)、その間に3レースもやり、大変お待たせいたしました。

十勝24時間のマルコ・アピチェラ話と、初参戦の鈴鹿1000kmの話もありますので、お付き合いいただければ幸いです。ニヤリ。

みなさん応援ありがとうございました!
2006年ニュルチャレンジもよろしく!




応援していただいた皆様です。


運動科学総合研究所 様
日本ゆる協会 様
三笠産業株式会社 様
株式会社ニューズ出版 様
株式会社パワータンク 様
VTECSPORTS編集部 様
自動車体感研究所 様
中谷明彦 様
中谷塾 様
GARAGE Pipo 様
オートサービスたかはし 様
住友ゴム工業株式会社 様
FORTEC 様
FORTUNE 様


クラゴン応援団

モンツァ会 様
藤田竜太 様
斉藤義方 様
弥永 朗 様
相澤葉子 様
斉藤 勉 様
岩瀬正之 様
若林利也 様
若山牧雄 様


スタッフ

クラゴン(ドライバー、写真、動画撮影、編集)
岸本裕之(ドライバー)
藤岡明彦(ドライバー)

武田清(チーフメカニック)
高橋幹尚(ヴィッツ担当メカニック)
丸田 智(アルテッツァ担当メカニック)

小池 亘(ヘルパー)
時田かおり(ヘルパー)
橋本武司(ヘルパー、写真)
橋之口利朗(ヘルパー)

クラゴン部屋(ドライビング指南)






2005 ニュルブルクリンク TOP