クラゴン部屋的ドライビング・プレジャー論 |
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2011年、気合いが入るヤツ第2弾です。 オレがいろいろ書くのは、別に自分のドライビングが唯一無二で全面的に正しいとは思ってるからじゃないんですよ。物理的には正しいとは思ってるけど(笑)。 なぜかというと、みんなで「アレがいいんじゃないか」「コレがいいんじゃないか」と遊ぶためです。だから多くの意見があるのは大歓迎です。だけど、例えばメディアに出るような人は、趣味のクルマ好きさんに対してのクルマのプロじゃーダメだと思うんですよ。本質的なドライビングのプロじゃないと。 素人さんの話をさらに素人さんが聞くんじゃ、それこそ素人向け専門誌、素人が出る素人のためのプロの素人向けメディアになっちまいます。 多くの人に何の抵抗もシフトもなく受け入れられるようなこと、その通りだ!と、支持してもらえるようなことは本質から外れてます。たぶん。多くの人がその通りだと思うことが正解なら、みんなもっと上手いはずだから(笑)。 クラゴン部屋は世界唯一のドラテク鍛錬場ですから、バリッと軸を通して、ズッキューンと気合いの入る本質的なヤツを行こうじゃありませんか。 ドライビング・プレジャーとクルマとの関係について考えてみました。 クルマで楽しく遊ぶためにチューニングするのに、上手くいかないでつまらなくなってしまうことは現実にあります。要するに、クルマの性能を上げていけば幸せになれるとは限らんということですな。そこを分析してみましょう。 オレも自動車体感研究所の研究員ですので、常に考えているわけでございますよ。 ![]() まず緑バーがクルマの性能。限界でもいいけど性能にしておきましょう。そして実現性能はクルマの性能に対して、ドライバーがどこまで引き出せるかということです。ドライビングスキルといってもいいけど、あとの説明で違うことになっちゃうから実現性能にしました。 上の人だと70%くらいはクルマの性能を引き出しているということにしましょう。 ![]() そして残りの30%くらいを赤くしてみました。コレはクルマの限界に対して使い切れない部分。実現不能領域にしてみました。気の利いた名前が思いつかねえ。 この赤い実現不能領域が少ないほど、クルマの性能を引き出しているといえます。 で、この実現不能領域が少ないほど、クルマの性能と実現性能がリンクしているほど、ドライビング・プレジャー度が高いという見方もできるんではないかと思いまして。 例えばポルシェGT3レースカーとロードスターなら、誰でも欲しいのはポルシェ。でもサーキットで走って「楽し〜!」と思えるのはむしろロードスターでしょう。オレはプレイ上等のヘンタイ親方なのでポルシェGT3の上級者向けプレイを希望しますが。 クルマの性能と、ドライバーの実現性能がある程度リンクしているのが、自分のクルマを自分の能力でコントロールできる状態であり、とっても満足感の高い、楽しいことだと言えるでしょう。 だから、ドライバーのスキルに応じて、楽しいと感じるクルマに差異があるのは当然といえます。 人間とクルマの親和性の高さ、という表現もできるかもしれません。 場合によってはクルマの性能が低いということも考えておかねばイカンでしょう。 ![]() クルマがヘチマすぎて、ドライバーの思い通りに走れない。ドライバーの期待にあまりに応えてくれなくて、対話不能に近い状態です。 こういうときにはチューニングしてクルマの性能を上げると効果がありそう。レースのセットアップはこうです。「ここでもっとこういう挙動になったら、もっと速度を上げられるのに」という話です。裏を返すと、限界で走れないヤツにはセットアップはできません。だってクルマの限界がわからないから遅いんだから、セットアップもヘチマもないべさ。 だからニュルでドイツの変態さんたちが言うことを聞くのは、まさにオレがタイムを出したというその一点のみの効果です。 でもみなさんがこういう状況になることは、まずないと考えていいでしょう。「クルマの限界が低くてダメだ」なんていうのは多くの場合でただの勘違いで、クルマとまるで相談してないから、言うことを聞いてくれないだけ。今のクルマはそれくらいよくできてます。 ここでチューニングに走るのが、間違ったデチューンをはじめてしまう時でしょう。 純正がダメだと思ってる人は、問答無用で実現性能の方が高いと思ってるんだよね。普通のみなさんが乗るなら、今の純正クルマは実現性能以下ということはないと考えた方がいいです。 サーキットを走るためのチューニング、というのが当てはまるのはブレーキ関係だけかな。パッドとかオイルとか。サスとかインチアップとか剛性アップなんかいりません。 だけどチューニングすりゃタイムが上がるじゃねーか、そしたら楽しいじゃねーかとお考えのみなさんには、ちゃんとキャイン&ギャフンの話を用意してあります。 ![]() 下の緑グラフのクルマの性能が増えてるのは、チューニングの結果。タイヤを替えるのでもいいし、アシを組むのでもいいし、ゴーストハッ・・・じゃなくてブーストアップでも何でもいいでしょう。何か字面が似てるだけでつい(爆)。 クルマの限界が高くなるのに応じて、実現性能は上がります。これはもちろんドライバーが突然お上手になるからじゃなくて、ラフな速度コントロールや、ラフな操作をある程度受け止めてくれるように、機械としての性能は上がってるからです。青グラフが増えてるのはクルマのおかげのタイムアップです。 蒼グラフをドライビングスキルにしなかったのはここの説明のためです。 で、「タイム上がった〜ベスト更新だ〜」と喜ぶ一方で、実現不能領域はむしろ広くなっていて、実はクルマの性能をまるで引き出していない。本来2秒上がるチューニングで1秒のタイムアップに喜ぶ、という残念なことになってしまうのですよ。 そしてここからがポイントなんですが、実現不能領域が増えてることに、実は潜在的には気付いてる人は多いんじゃないかと推測してます。自分で気づかないフリをしているだけで。 クルマの限界を上げたら使い切るためのハードルは当然高くなるわけですから、気付かない方が幸せといえば幸せ。 だからタイムの話ばっかりになるんですよ。実現不能領域が広い、つまりドライビング・プレジャー度が低いからこそ、そこから目を逸らすがために、タイムだけに価値を見出す方向になってくんじゃないかな。クルマに乗ってるその瞬間をほっぽって、タイムが出たら楽しい、出なかったらつまらない、それは完全にドライビングの本質から外れています。 クラゴン部屋では「上達の結果として勝手にタイムは出る!」と言い張ってますので、別にタイムに価値がないとはいいません。ただ、上達すればタイムは出るけど、タイムが出たら上達ではないということです。 自分にとって1回でも過去ベストのコーナリングができたら、1周のタイムなんかどーでもいいんですよ。 でも過去ベストのコーナリングが続いたら、そりゃタイムが出ちゃうのはしゃーない。だって速いんだから。 |
クラゴン部屋というかオレが個人的にってつまりそれはクラゴン部屋なんですが、とりあえず推奨のクルマ:実現の割合を紹介しておきましょう。![]() 自分の限界よりほんのちょっとだけ性能の高いクルマです。95対5くらいの割合でしょうか。 ほんのちょっとだけ欲張らないといいドライビングにならない、ココがポイント(笑)。思うとおりに走ってちょうどいいと、そこで止まっちゃうから。 だいたいの車種で、まずブレーキパッド以外の速くするチューニングはしないで走り込む。そうすると人間が上達して、上手いことこういう状態になるでしょう。例えばインテRなんかはなりやすいと思います。ロードスターだと純正はちょっとアレかな。そのためのSPEC上達だし。 そんでもって、ドライビングスキルが上がって、ドライバーの実現性能が上がったら、アシを替えたりタイヤを替えたりして、また実現不能領域をちょっとだけ作れば、さらに上達するのにいいでしょう。 そうやって取り組む段階で「アレはダメ」「コレは全損」とか知る機会だってあるじゃないですか。どこに行くかを選べば。そうすれば買う時にヘチマパーツを選ばないというスンポウです。チューニングってこういうふうにやってけば、ムダに金をかけないで、本当に必要なモノを選べるんだけどね。 そしてその時々で、自分のスキルに合った状態にセットアップしていくことで、クルマとの親和性も高くなって、ドライビング・プレジャーとドライビングスキルが螺旋状にズモモモと上昇していく、という風が吹いたら桶屋がもうかるみたいなことになったらいいなあ。 おっと正直に書きすぎた。 でもこの程度じゃドライビング・プレジャーの本質の話にはならないか。うーん、難しいぜ。 まあ、あくまでもドライビング・プレジャー度ということで。参考程度にしてください。 初心者には寛容、ベテランには上等のクラゴン部屋の裏では、こんなことを考えてたりする・・・かも。。 |